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面会交流とは

 

面会交流とは

離婚前の別居中や離婚後に、子どもを監護していない親が子どもと会うことを「面会交流」といいます。
 
民法766条1項は、「父母が協議上の離婚をするときは、・・・父又は母と子との面会及びその他の交流・・・について必要な事項は、その協議で定める。」と規定しています。同条項を根拠に、非監護親が監護親に対し、面会交流を請求する権利があるとされています。
 
「面会」とは、非監護親と子どもとの直接的な交流を指し、「その他の交流」とは、より広く、電話による会話や手紙、メールによる意思疎通を含むものとされています。
 
実務では、前者を「直接交流」、後者を「間接交流」と呼んでいます(東京弁護士会「LIBRA 2017年5月」2頁)。
 
 
 

面会交流の求め方

 
離婚協議をする上で、監護親が面会交流を認める場合、離婚協議書に面会交流を認める条項や、面会交流の頻度や方法についての条項を入れることで問題なくまとまることもあります。
 
しかし、監護親と非監護親が強く対立している場合、面会交流について協議でまとまらないケースは少なくありません。
この場合、面会交流を求める非監護親としては、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てることができます。
 
以下、調停や審判において、面会交流がどのように審理されるのか説明します。
 
 
 

面会交流の判断基準

 
面会交流を認めるべきかどうかの判断基準には、様々な考え方があります。
 
1)子どもの利益に積極的に寄与することが明らかな場合は認めるべきとする見解
2)特段の事情(明らかに子どもの利益を害する事情)がない限り認めるべきとする見解
3)非監護親が子どもに対し、直接その利益を害するような行為をするおそれがない限り認めるべきとする見解
 
があります(秋武憲一『離婚調停(第3版)』165頁)が、3)→2)→1)の順に、面会交流を広く認めるべきだと考えています。
 
このうち、実務では、2)の判断基準が採用されていると言われています。
すなわち、当該事件の個別具体的な事情から、面会交流を禁止したり、制限したりする事情(それぞれ「禁止事由」、「制限事由」といいます。)がないかを検討する方法です。継続的な面会交流を実施することで、子どもの情緒面に影響し、精神的に不安定になるおそれがないか、健全な成長を阻害するような事情がないか、ということを調査し、交流をすべきか否か、交流すべきであればどのような交流をすべきか、ということが話し合われます。
 
ただ、実務において2)の判断基準が採用されていると言われるものの、民法において面会交流の根拠条文が規定されたのは、平成23年であり、比較的最近の話です。
ようやく面会交流が権利として明文化されたという経緯もあり、最近では3)の判断基準に近く、より広く面会交流を認める考え方が有力になってきました。
 
家庭裁判所における調停においても、裁判所が広く面会交流を認める考えを持っていることを実感します。裁判所としては、当該事件の個別具体的な事情はさておき、面会交流を実施することが子どもの利益につながるという発想が強い印象を受けます。この傾向は、面会交流を求める非監護親からすると、有利な流れといえます。しかし、様々な理由から面会交流に不安を抱える監護親からすると、不利な流れといえるでしょう。
 
当事務所にご相談に来られた方の中にも、調停委員や家庭裁判所調査官から「原則実施論」を説かれ動揺したという方もおられます。
 
 
 

面会交流の禁止事由、制限事由 

 
面会交流の判断基準を明確に示した法律上の根拠はなく、禁止事由や制限事由も規定されているわけではなく、実務上、面会交流を実施することで子どもの利益を害することが明らかな事情を「禁止事由」といい、禁止事由までは至らないものの、直接的な面会交流は避けた方がよい事情を「制限事由」と分類している印象です。
 
(a)子どもが非監護親によって奪取される危険性がある、(b)非監護親が子どもを身体的、精神的、性的に虐待していた、(c)非監護親が監護親に対し暴力を振るっていた、という事情がある場合は、「禁止事由」として面会交流の禁止が検討されることが多いです(3つの分類につき、秋武憲一『離婚調停(第3版)』172頁)。
 
裁判所の考えが広く面会交流を認める傾向にある以上、監護親にとって面会交流実施に強い不安があったとしても、それが「禁止事由」に該当するほどではない(もしくは立証に足りうる資料がない)場合、直接交流を拒絶する主張は、極めて認められにくいといえます。
 
 
 

家裁調査官の調査の実施

 
面会交流は、家事事件の中でも長期化しやすい案件といえます。面会交流調停では、「面会交流を求める非監護親と子どもが良好な関係を維持する」という要請と、「監護親のもとで安定した生活を送る」という要請の利害を同時に調整する必要があります(秋武憲一『離婚調停(第3版)』169頁)。
 
例えば婚姻費用や養育費等、夫婦の金銭に関する問題であれば、当初対立があったとしても、回数を重ねることで、結果的に算定表に近い金額で合意に至ることもありますが、面会交流調停の場合は、回数を重ねるごとに、監護親による拒否の姿勢が強固になることも多くあります(小泉道子『元家裁調査官が提案する面会交流はこう交渉する』12頁)。
 
そのため、多くの調停で、調停委員のほか、家庭裁判所調査官が調停に参加します。
家庭裁判所調査官は、子どもの教育や発達について専門的な知識を有します。家庭裁判所調査官になるためには、裁判所職員採用総合職試験(家庭裁判所調査官補)を受験して採用された後、裁判所職員総合研修所において2年間研修を受けて必要な技能等を修得することが必要です(裁判所HPより)。
 
家庭裁判所調査官が、裁判官の命令を受けて様々な調査を実施することで、禁止事由、制限事由の有無が明らかになります。
具体的には、監護親・非監護親の意向調査、子どもの生活状況の調査(家庭裁判所調査官が家庭訪問を実施することもあります。)、子ども自身の心情調査、保育園や小学校、通院する病院等、関係各機関への調査等、調査は多岐にわたります。
 
 
 

子どもの意思

 
禁止事由、制限事由は認められないものの、家庭裁判所調査官による子どもの心情調査の結果、子ども自身が非監護親に会いたくないと話した場合、裁判所はどのように判断するでしょうか。
ケースによって複合的な要因が相まって結論を出しますので、一概に言うことはできませんが、その子どもの年齢によって、その意思が重視される度合いが異なる印象を受けます。
 
  
      • 1.中学生の場合

 
      • それぞれの子どもによって発達の程度は異なりますが、子どもが中学生以上の場合、両親の状況、自身の置かれている状況、面会交流を実施する意義について一定の理解ができることが多いことから、面会交流の実施を判断するに当たり、子どもの意思が重視されることが多いです。

 
 
      • 2.小学生の場合

 
      • 一方、小学生の場合、子どもの心情調査がなされ、仮に非監護親に「会いたくない」と発言したとしても、裁判所は、それだけで直接的な面会交流を実施しないと判断することについて慎重になります。子ども自身が自身の状況を理解できておらず、また、監護親に気を遣っているケースが多いからです。「会いたくない」という理由が過去の具体的な事実(同居中、非監護親との関係性が悪かった等)に基づいているか、それとも抽象的なイメージ(具体的なエピソードはないものの、なんとなく恐そう等)に基づいているか、慎重に調査をする必要があります。もちろん、子どもによって発達はそれぞれですので、小学生や中学生といった分類だけでなく、その子どもの特性に沿った主張をする必要があります。

 
 
      • 3.乳幼児の場合

 
      • 乳幼児の場合は、子どもが自身の気持ちを表現することが難しいことから、仮に生活状況調査等において非監護親に「会いたくない」という発言があったとしても、重視されないことが多いです。その他の禁止事由、制限事由がないかどうかを調査によって判断することになります。

 
 
 

面会交流の実施方法

 
面会交流調停では、必要な調査を経て、非監護親が子どもと直接交流を実施するか、間接交流を実施するか、交流を行わないか、調停条項に定められます。
特段争いがない場合は、「月に1回、直接交流することを認め、その具体的な日時、場所、方法については、子の利益に配慮し、当事者間の協議で定める。」という内容になることが一般的です。
 
非監護親が月に1回を超える頻度を求める場合、宿泊を伴う交流を求める場合、学校行事への参加を求める場合には、監護親の理解や協力が不可欠ですので、大きく争いになると難しいケースが多いです。
また、普段同居をしていない非監護親と子どもが直接交流を実施することに監護親が抵抗を感じることも多いです。
 
当事務所では、直接交流の実施が難しい状況においても何らかの暫定的な交流を求める非監護親の代理人として、スマートフォンのアプリによるビデオ通話機能を利用したオンライン面会を直接交流の代替的な手段として求め、実現させたケースがあります。