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交通事故の(物損)物的損害の詳細

 
 
 
 
 
 
 

交通事故の物損(物的損害)について

 
 交通事故によって被った損害は、不法行為責任(>>民法709条)として、交通事故の相手方に対し請求することができますが、請求が認められる損害は、相当因果関係の範囲内のものに限られます。
 
 交通事故による損害は、大きく分けて、物的損害と人身損害に分けられますが、多くの場合、人身損害よりも先に損害が確定する物的損害の示談が先行して進められます。
 
 そこで、まず、上記因果関係が認められることを前提に、物的損害について請求し得るものとその具体的内容を、以下、順に説明します。
 
 〈請求し得る主な物的損害〉
 

      1. 修理費等
      2. 車両購入費用
      3. 評価損
      4. 代車料
      5. 休車損
      6. 事故処理費用
      7. 損害賠償請求関係費用
      8. 積荷、着衣、携行品(時計、スマートフォン、チャイルドシートなど)
      9. その他(ペットの治療費、旅行のキャンセル料、増加保険料)

 

    • 注)上記すべてを請求できるわけではありません。

修理費等

 交通事故により車両が損傷し修理が必要な場合、現に支出した修理費や、現に修理をしていなくても、現実に損傷している以上損害は発生しているとして、修理費相当額を車両評価額の下落分と同額と考えて、修理費相当額を損害として請求することができます(大阪地方裁判所判決平成10年2月24日、神戸地方裁判所判決平成28年10月26日)。
 

1.誰が請求できるか

 

      • (実質的)所有者 

 

        •  車両の交換価値を把握する者として民法709条に基づき請求することができます。

        • 例)自動車検査証(車検証)上の所有者名義人、買主名義の車両を支配管理していた販売業者など

 
 

      • 実際に修理費を支出して修理をおこなった使用者

 

        •  使用者は、実際に修理費を支出して修理した場合、>>民法422条の類推適用により、所有者の損害賠償請求権の代位行使として請求することができます。
        •  他方、修理が未実施である場合、使用者は、所有者と異なり、車両の交換価値を把握している立場になく、当然には、民法709条に基づく損害賠償請求ができないと解されています。
        •  ただし、裁判例では、次掲以下のような法的構成によって一部の使用者に認められています。

 
 

      • 所有権留保特約付き売買契約による未払い代金債権の担保のために所有権が留保にされた車両の買主たる使用者

 

        •  買主たる使用者が、修理をし、または、修理費を負担する予定がある場合、留保された所有権が担保権であることを理由に、実質的所有者を使用者とし、民法709条による損害賠償請求を認めた裁判例(京都地方裁判所判決平成24年3月19日)や、売主に対し担保価値を維持する義務を負っていることを理由に、使用者に対する不法行為として、同条による請求を認めた判例などがあります(東京地方裁判所判決平成26年11月25日)。

 
 

      • 車両リース契約のユーザー

 

        •  リース契約では、契約上、ユーザーが修理代金を負担することが多いですが、ユーザーが実際に修理費を負担する前に、第三者である加害者に対して、直接、民法709条に基づく損害賠償請求をすることはできません。
        •  そのため、裁判例では、リース会社からユーザーへの損害賠償請求権の譲渡(大阪地方裁判所判決平成11年7月7日)や、物的損害の賠償請求権をユーザーが行使することの合意(名古屋地方裁判所判決平成27年7月13日)を根拠に、ユーザーに損害賠償請求を認めています。

2.どのような修理が認められるか

 
 一般に、修理費を請求する場合、ディーラーや修理工場から、損傷箇所に対する修理費見積書を取得し、その金額を事故の相手方に請求しますが、修理の範囲や方法、部品や工賃の金額について相当性が問題となる場合があります。
 
 原則として、損害額の立証は、請求する側の責任で行わなければなりませんが、被請求者が金額が異なる見積書などを提出した場合など、損害額の認定が困難な場合は、>>民事訴訟法248条を適用して、損害額を認定した裁判例横浜地方裁判所判決平成27年11月26日など)。もみられます。
 
 以下、修理費について、よく問題となる点を説明していきます。
 
 

      • 塗装について 

 

        •  原則として、事故よって塗装が必要となった部分のみの塗装(部分塗装)しか事故との相当因果関係がある損害として認められないことが多いようです。
        •  
        •  例外的に、

 

            1. 特殊な塗装技術を施しているため、部分塗装では、他の部分との相違が明白になって美観が害される場合
            2. 車両自体が高価で、かつ、その価値の大部分が外観による場合
            3. 部分塗装の範囲が広く、全塗装と比較して費用があまり変わらない場合

 

        • などに認められるとして裁判例(札幌地方裁判所室蘭支部昭和51年11月26日)もあります。
        •  裁判上では、単に高級車というだけでは認められず、一般人の観点から、美観を損ねるほど色などの違いが明白に異なることや、部分塗装と全塗装の費用の差額の大小などによって判断されるようです。

 
 

      • コーティングについて

 

        •  コーティングを施工していることやコーティングの効果が残存していることを施工証明書や保証書などで示すことができれば認められる可能性があります。

 
 

      • 部品交換について

 

        •  裁判では、板金塗装で修理可能な場合は、部品の交換の金額は認められにくく、板金塗装の費用の範囲で損害額が認定される傾向にあります。

 
 

      • 部品や工賃の金額について

 

        •  修理見積りは、一般的な修理工場の場合、損害保険会社各社が出資して設立した>>株式会社自研センターが策定した指数(一定の条件下で計測lした作業時間に車格などの時間以外の要素を組み込んだもの)に指数対応単価を乗じて算出されています。そのため、修理代は、保険会社との協定によって決定されることが多く、それらの単価が争点となることは多くありません。
        •  また、上記指数のほか、自動車メーカーや輸入車販売元が策定したメーカー工数や、日本自動車整備振興会連合会が策定する自動車整備標準作業点数表などがあります。

  

        •  なお、裁判所は、不相当に高額でなければ認める傾向にあります(横浜地方裁判所判決平成27年11月26日など)。

3.事故と損傷範囲の因果関係の認定について

 
 同型のパーツが複数あるヘッドライトやミラー、タイヤホイルなどの一部のみが事故により損傷し交換が必要となった場合、一方のみではそれらの対称性が崩れ、車両の美観が損なわれてしまうことがあります。そのような場合、すべての交換が修理費として認められるかについて問題となることがあります。
 
 裁判例では、ヘッドライトの片方のみが事故により損傷し交換が必要となった事案において、車両の「外観上の美観保持等のために、商品の修理・交換するための費用は、事故との相当因果関係のある損害とはいえない」などとして、事故により損傷しなかった他方ヘッドライトの交換費用を修理費として認めませんでした(横浜地方裁判所判決平成25年7月11日)。
 
 ただし、従前と同型のタイヤホイールが調達できないなど他の部分との相違が明白で美観が著しく損なわれる場合は、損傷をしなかった部分を含めたタイヤホイールの交換費用が修理費として認容される可能性が高くなると思われます。

4.まずは納得のいく修理内容で請求してみる

 
 以上のように、原則として、交通事故と損傷に相当因果関係があるといえるかどうかが請求が認められるかどうかの判断の基準とされます。
 また、裁判上においては、美観の問題は重視されない傾向にあります。
 
 上記のとおり、修理内容や金額は、修理工場と保険会社の協定によって決定されることも多いですが、任意保険会社へ請求する際には、まずは、納得のいく修理内容で費用を請求してみてもよいかと思います。