自己破産手続きの詳細
自己破産手続きとは、裁判所によって、資産(一定の資産を除く)を現金化し債権者に配当すること(破産手続き)を前提に、借金の返済義務が免除される手続き(免責手続き)です。
返済義務の免除という大きなメリットが得られる分、手続きは厳格で、ギャンブルや浪費、投機行為、過去7年以内に自己破産をしている場合など免責不許可事由があると免責されないこともあります。
また、いわゆるブラックリストに約10年間記録が残るため新たな借入れが困難になったり、職業制限や通信の秘密の制限(郵便物が破産管財人に転送され中身をチェックされます。)などのデメリットもあります。
借金増大の経緯や資産を調査する破産管財人が就く手続き(管財事件)と、例外的に破産管財人が就かない手続き(同時廃止)があります。それぞれの裁判所ごとに一定の基準があり、借金の総額や経緯、資産の有無などによってどちらの手続きにするか裁判所が決定します。
自己破産手続きは多摩・相模法律事務所が最も得意とする分野で、弁護士の藤森は裁判所が選任する破産管財人も務めています。町田や相模原を含む西東京地区ではトップクラスのノウハウを有し、難易度が高い法人破産・個人事業主の自己破産も数多く取り扱ってきました。
1.管財事件とは
自己破産手続きのうち、裁判所の判断で破産管財人が選任される手続きです。事案が複雑な場合、不動産などの高額資産や多額の現金を保有している場合や、ギャンブルや浪費、FXなどの投機行為が債務増大の原因になっている場合などに破産管財人が選任されます。同時廃止に比べ、要する期間が長く費用も多額になります。
2.同時廃止とは
自己破産手続きのうち、破産管財人の報酬や配当に充てるべき資産がないことや債務増大の原因が明白で、免責不許可事由などがなく、破産管財人の調査が不要と判断される場合になされる例外的な手続きです。裁判所によって、破産手続きの開始と廃止(終了)が同時に決定され、その後に免責すべきかどうかの決定がなされます。管財事件に比べ、要する期間が短く、費用も少額ですが、破産管財人の調査が不要と判断される程度のしっかりとした申立書を作成し、資料を提出しなければなりません。
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同時廃止となる目安
- 少なくとも、以下のすべてを満たしている必要がありますが、最終的には裁判所が決定します。
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1.33万円以上の現金がないこと
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2.20万円を超える換価対象資産がないこと
- 換価対象資産とは以下のようなものをいいます。
- 預貯金(全口座の合計を20万円超の基準とします)
- 未払賃金(4分の1相当額を20万円超の基準とします)
- 退職金請求権(退職が決まっていない場合は8分の1、退職が決まっている場合は4分の1相当額を20万円超の基準とします)
- 貸付金、売掛金等(全債権額の合計を20万円超の基準とします )
- 積立金等(社内積立・財形貯蓄などの合計を20万円超の基準とします )
- 保険解約返戻金(全保険の合計を20万円超の基準とします)
- 有価証券
- 自動車、バイク等
- 不動産(被担保債権の残高合計が不動産の平均査定価格の1.5倍を超える場合、当該不動産は資産として評価されません)
- 相続財産(分割未了のもの)
- 事業設備、在庫、什器備品等
- その他破産管財人の調査によって回収可能な財産(過払金など)
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3.免責不許可事由がないこと
- 免責不許可事由には、ギャンブルや浪費、投機行為、過去7年以内に自己破産している場合などがあります(詳細は次項に記載)。
- 免責不許可事由があっても裁判所の裁量によって同時廃止もあり得ます。
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4.負債総額が過大でないこと(事案や管轄裁判所の基準によります)
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5.その他破産管財人の調査が必要となる事情(債務増大の原因が不明瞭であることなど)がないこと
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6.個人事業主や法人代表者でないこと(事業の状況にもよります)
3.免責不許可事由とは
以下のいずれにも該当しない場合に、裁判所から免責許可の決定が出されます。免責不許可事由がある場合であっても、裁判所の裁量によって免責が許可されることもあります(裁量免責)ので、許可されるような申立てや弁明ができる弁護士を選ぶべきです。
- 債権者を害する目的での、財産の隠匿・損壊・不利益処分・不当な価値減少行為
- 破産手続の開始を遅延させる目的での換金行為
- 例)クレジットカードで購入したチケット等の低額での売却
- 一部の債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的での、偏頗弁済等
- 例) 返済期限が来ていない債権者(親族や友人など)への返済
- 浪費・ギャンブル・投機行為・FX などによる著しい財産の減少、過大な債務負担
- 破産申立前1年以内に、支払不能な状態であると知りながら、収入や他の借金の金額を偽った借入れ
- 帳簿や決算書類の隠滅・偽造など
- 虚偽の債権者名簿の提出
- 例) 親族や友人を債権者として申告しない
- 裁判所の調査に対する説明拒否または虚偽説明
- 破産管財人等の職務の妨害
- 以前の免責許可決定や再生計画認可決定の確定から7年以内の自己破産申立て・説明義務・書類提出義務・協力義務違反
4.非免責債権
以下の債権は、自己破産手続きで免責されません。
- 税金、罰金
- 悪意の不法行為に基づく損害賠償請求権
- 故意又は重大な過失によって人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
- 養育費、婚姻費用、扶養義務から生じる債権
- 意図的に記載しなかった債権者の債権
- 個人事業主の雇用関係に基づいて生じた従業員の請求権及び預り金の返還請求権
5.自由財産
自己破産手続きでは、原則、自己破産手続開始決定時に保有する財産はすべて破産財団に組み入れられ、換価のうえ、債権者に配当されます。
例外的に、生活に必要となる最低限度の財産(自由財産と言います。具体的には以下のとおり)は、破産財団に組み入れられず、お手元に残すことができます。
なお、東京地方裁判所や横浜地方裁判所では、破産財団を構成する財産であっても、自己破産手続きの費用に充てることは許されています。
- 破産手続開始決定後に取得した財産(新得財産)
- 差押禁止財産(生活必需品、 業務に欠くことができない器具その他の物など)
- 99万円以下の現金
- 裁判所(自由財産の拡張)によって認められた上記以外の自由財産
- 破産財団から放棄された財産(換価できない財産等)
上記のような法律上の自由財産以外で、各裁判所の基準によって自由財産としてわれるものもあります。
(以下、東京地方裁判所の換価基準)
- 合計で20万円以下となる預貯金
- 合計で20万円以下となる保険解約返戻金
- 処分価格が20万円以下の自動車
- 住居の敷金
- 8分の1相当額が20万円以下の退職金
- 8分の1 相当額が20万円を超える退職金の8分の7相当額
6.手続きのながれ
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1.ご相談(債務整理の相談は何度でも無料です。)
- ご不安や疑問点への回答、自己破産による影響や費用、時間など見通しをお伝えします。
- ※弁護士に依頼するかどうかは後日決めていただいて大丈夫です。

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2.ご契約

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3.弁護士から、借入先に対し、通知を発送
- 弁護士が自己破産手続きに着手する旨を郵便やFAXで通知します。
- 弁護士からの通知によって請求がとまります。
- 請求がとまっている間に、必要資料の収集と費用をご用意いただきます。

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4.取引履歴の開示と引き直し計算
- 通知が受け取られたら、借入先から、借入と返済の一覧が記載された取引履歴や残高が記載された書類が開示されます。
- 取引の利率が高かった場合は、適正な利率で計算をしなおし、過払い金の有無等を調査し、正確な借入総額を把握します。
- 万が一、過払い金や時効によって、借入総額が大きく減少した場合は、自己破産手続きを中止することも検討します。

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5.裁判所へ申し立て
- 必要な資料が揃い、費用の目処がつけば、裁判所に自己破産の申し立てをおこないます。
- 申立前に、管財事件になるか同時廃止になるか見通しがついていることがほとんどですが、まずは同時廃止で申し立てを試みるなどの方法も採用することがあります。

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6-1.管財事件の場合:破産管財人との面談
- 管財事件の場合、破産管財人が選任され、免責や資産について調査します。
- 面談では、申立書記載の事実確認や、今後の手続きややるべきことについて説明がなされます。
- 破産管財人が就いているあいだ、郵便が破産管財人に転送され、内容がチェックされます。
- お住まいの管轄裁判所によって、申立後の手続きの順序や面談のタイミングが異なります。
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6-2.同時廃止の場合:裁判官との面談(免責審尋)
- 同時廃止の場合、裁判官と面談をします。
- お住まいの管轄裁判所によって、申立後の手続きの順序や面談の有無・タイミングが異なります。

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7.破産管財人による免責調査・資産換価(管財事件のみ)
- 管財人によって、免責させても大丈夫かどうかや債権者の配当に充てるべき資産が残っていないかどうかなど調査します。
- 資産があれば売却などし、債権額の割合に応じて配当に充てます。

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8.債権者集会(管財事件のみ)
- 債権者に対し破産財団の形成状況や配当について説明が行われます。
- 免責審尋を兼ねて行われることもあります。

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9.債権者集会(管財事件のみ)
- 裁判所から免責許可決定が送られます。
7.自己破産手続きのメリット
- 弁護士からの通知によって、いったん請求がとまりますので、生活や精神状態を落ち着いて立て直すことができます。
- 生活用品や99万円以下の現金、価値が20万円未満の資産(一定の制限があります)は残すことができる可能性があり、ご状況によっては、現時点の生活状況と変わらないで自己破産手続きを進められます。
- 任意整理などのように返済の経済的負担がないので、より早期の経済的復帰が可能です。
8.自己破産手続きのデメリット
- 信用情報に債務整理をおこなったという情報が登録されます。(いわゆるブラックリストに載ります。)ただし、すべての借入先で過払い金が発生した場合は登録されません。登録期間は7〜10年といわれていますが、借入先の業者によってまちまちで期間には長短があります。
- 債務整理をおこなった借入先の業者はもちろん、おこなわなかった貸金業者やクレジットカード会社も、新規の借入契約やカードの更新契約ができなくなる場合があります。
- 引っ越しの際、
- クレジットカード会社を通じて家賃を支払う場合は、審査に通らない場合があります。
- 官報(国が発行する新聞のようなもの)に名前と住所が掲載されます。
- 一定の価値がある資産は、債権者への配当に充てられるため、手放さなければなりません。(生活用品や99万円以下の現金、価値が20万円未満の資産(一定の制限があります)は除く。)
- 警備員や保険外交員など、破産手続開始により資格制限を受ける場合があります。
- 税金などの支払義務は免責されません。
9.よくあるご質問
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Q.相談料はかかりますか?
- A.
- 債務整理(任意整理・自己破産・個人再生・過払い金請求等)のご相談は無料です。
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Q.手続きが終わるまでどのくらいかかりますか?
- A.
- 6ヶ月〜1年くらいかかる方が大半です。手続きに必要な資料の収集や費用の積み立てに時間がかかる場合もあり、長い場合は2年くらいかかることもあります。
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Q.手続きにかかる費用がありません。どうしたらよいでしょうか?
- A.
- 多摩・相模法律事務所では、これまでの申し立て経験や破産管財人としてノウハウを活かし、できるだけ負担をかけないで自己破産手続きを進めることに務めています。
- お持ちの資産を有効に活用したり、分割でも承っています。費用の捻出にはさまざまな方法が考えられますので、先立つものがない場合でも一度ご相談ください。
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Q.家族に知られることはありますか?
- A.
- 自己破産手続きの場合、官報という国の刊行物に名前と住所が掲載されます。存在すらあまり知られておらず、読んでいる人も多くありません。また、掲載人数も多いので、知られることはあまりないと思います。
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Q.ブラックリストに載ってしまうと永遠にローンが組めなくなりますか?
- A.
- 自己破産手続きの場合、新たな借入が制限されるのは、7〜10年くらいといわれています。
- その他ご不明点やご不安がありましたら、お気軽にご相談ください。
10.取扱事例
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- Bさん(30代・男性)のケース
- Bさんは、約5年前から、収入が減少し、生活費の穴埋めをするために、貸金業者から借り入れを開始しました。以降しばらくの間、Bさんは、休日にアルバイトをするなど働き続けましたが、返済が追いつかず、気がつくと、返済のために借り入れを行うという、いわゆる自転車操業に陥っていました。
- 最終的に、Bさんの借金は総額330万円にも膨れあがり、Bさんは利息を返済することすら困難となりました。
- 毎日のように様々なところから請求の電話があり、いつもお金のことだけで頭がいっぱいになり、心が穏やかな時間はとてもありませんでした。
- 「もう限界だ」と思い、Bさんは弁護士に自己破産手続きを依頼すると、翌日から請求が止まりました。Bさんは、これからどうなるのか不安でしたが、弁護士は、Bさんに対し、破産手続に必要な書類を説明し、借金が膨らんだ経緯を詳細に聞きながら書類を作成し、5ヶ月後、裁判所に破産を申し立てました。
- その後ほどなく、Bさんは、裁判所から免責許可決定を得ることができました。裁判所の決定によって全ての借金は法的になくなり、Bさんは生活を立て直す第一歩を踏み出しました。